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高知家庭裁判所 昭和49年(少ハ)1号 決定 1974年6月17日

少年 D・Y(昭三〇・一二・二六生)

主文

本件戻し収容申請を棄却する。

理由

一  本件戻し収容申請の理由は昭和四九年六月四日付四国地方更生保護委員会作成の別紙「戻し収容申請理由」に記載のとおりであり、その要旨は、少年は特別少年院を仮退院後間もなく所在不明となり、住込稼働先において現金を窃取して各地を放浪の後、犯罪性のある者と交際のうえガソリンの窃取を重ね、もつて犯罪者予防更生法に定められた保護観察中の遵守事項に違背した、というにある。

二  当裁判所の判断

1  本件戻し収容申請一件記録及び当裁判所の調査・審判の結果によれば、次の各事実が認められる。

少年は、

(a)  昭和四六年九月二一日静岡家庭裁判所浜松支部において同支部昭和四六年少第一〇〇四、第一〇五八、第六五四八号窃盗等事件につき保護観察の決定を受け、その後昭和四七年七月一一日当庁において昭和四七年少第八二五号許欺等事件につき試験観察の決定を受けたが、右試験観察中に犯した当庁昭和四七年少第一三四三、第一三八八、第一四四九号窃盗等事件につき同年一一月七日特別少年院送致の決定を受けて特別少年院新光学院に収容されていたものであり、

(b)  昭和四九年一月一一日前記新光学院を仮退院後、松山保護観察所の保護観察下にあつたところ、同月一五日より所在不明となり、同年二月一一日住込稼働先であつた高知県高岡郡○○町○○××××番地○屋○一方において家人の留守中に同人所有の現金二〇万四、〇〇〇余円を窃取してから、東京都、大阪府堺市、高知県高岡郡等において徒遊・放浪生活を重ね、その間深夜共犯者らと共に、同年二月中旬、三月上旬、三月下旬の三回にわたりガソリンを抜き取り、四月上旬に自動車タイヤ及びペプシコーラ等の各窃取を続けた後、同年四月一二日高知市内の路上において無免許運転(道路交通法違反)を行うなどの、

各非行を重ねていたものである。

2  前示(b)の事実は、犯罪者予防更生法第三四条第二項の各号に該当し、少年が仮退院者の遵守事項に違背したものであることは、まことに申請人主張のとおりである。そこで進んで戻し収容の当否につき判断するに、少年は、幼少より家庭での愛情と躾を満足に受けることなく不遇のうちに成長したものであるが、申請人も自認するとおり、「早発非行少年」であつてその「非行性性格は固定化している」ものと思料されるところ、特別少年院仮退院直後の時点において既に更生の意欲の欠如していたこと(本件申請記録中保護観察官作成の質問調書参照)が認められ、同少年院での矯正教育が成功をみないまま仮退院のなされていたことが窺知されるところであるが、右仮退院後もその就業は持続せず、徒遊・不良交友を重ねて非行を犯していたことが明らかであつて、当庁調査官の調査及び鑑別の諸結果に徴しても、長期にわたる施設収容生活を経験した少年を再び特別少年院に戻して収容することは適当でないと思料され、非行性の進展及び少年の年齢等を考慮し新しい処遇として刑事処分を選ぶのが相当であると認められるから、仮退院後の前記各非行のうち前記道路交通法違反事件を除いた昭和四九年少第四七〇、第五三八号事件につき当裁判所は昭和四九年六月七日検察官送致の決定をしたものである。

以上の次第であるから、本件戻し収容の申請はこれを棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判官 田村承三)

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